耐震化は進んでいるのか?2018年時点耐震診断実施状況

BUSINESS TREND 耐震化は進んでいるのか?2018年時点耐震診断実施状況 2020.02.26

総務省は9月30日、「平成30年住宅・土地統計調査」のうち、「住宅及び世帯に関する基本集計(確定値)」の結果を公表しました。今回150超のデータが一気に公表され、全国・都道府県だけでなく、市区町村まで細かく集計されており、私たちは住宅や土地に関するより精密なデータを見ることが可能になります。【日本の住宅の今を知る!住宅・土地統計調査を大解剖】と題した特集で、この「住宅・土地統計調査」で気になるデータをピックアップし、深堀していきたいと思います。

今回は住宅の建物の耐震性能についての考察です。住宅・土地統計調査では、「持ち家」について、平成26年1月以降、建築事業者などの建築士に依頼して、地震に対する安全性について調べる耐震診断を行ったか否かの設問と、行った場合に耐震性能が確保されていたか否かを問う設問があります。それでは、2018年時点の日本の建物(ここでは「持ち家」に限られます)の耐震性能について概略をみていきましょう。

国土交通省の耐震化目標

そもそも耐震化とは、大規模地震によって建物が倒壊・損壊しないように建物を補強することを言います。
現在の耐震基準は1981年に改正された建築基準法により定められており、震度6~7程度の揺れでも倒壊しないような基準となっています。
国土交通省では「建築物の耐震改修の促進に関する法律」を制定しました。そして、国の基本方針において、住宅の耐震化率及び多数の者が利用する建築物の耐震化率について、平成32年までに少なくとも95パーセントにすることを目標とするとともに、平成37年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標とし、耐震化の促進を図っています。

(国土交通省資料より)

旧耐震持ち家の約半数が耐震性能未確保か?

建築の時期別にみた耐震診断実施率は以下の通りです。

これを見ると1980年以前、つまり旧耐震物件の9割超が耐震診断未実施であることが分かります。旧耐震基準であるにも関わらず、耐震診断すら行われていないのが現状です。

また、耐震診断をした1980年以前の建築物について、耐震性が未確保である物件はほぼ半数の49.1%に及びました。耐震診断をしていない建築物がすべてこの割合であるとは言い切れませんが、いずれにせよそれ以降の年代に比べて耐震性能が未確保である割合は各段に高いと言えそうです。

次に構造別にみていきます。
耐震性能(木造・非木造),住宅・土地統計調査

こうみると、木造の耐震診断実施率、耐震性能未確保率ともに低い数値となっています。

耐震化は進んでいるのか?

耐震診断実施前回調査との比較,住宅・土地統計調査

前回調査と比較してみましょう。上段は戸数、下段は1980年以前の持ち家数における各項目の割合です。調査結果を純粋に比べると、2013年から2018年の5年間で、旧耐震持ち家の2万2千戸で耐震診断が実施されました。年間に約4,360戸が耐震診断を受けている状況です。それでも、旧耐震持ち家全体の母数で見ると実施率は0.5%上昇したに留まります。旧耐震持ち家に関しては、耐震診断の実施や耐震化が大きく進んでいるとは言えない状況のようです。

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