未だに根強い社宅需要

BUSINESS TREND 未だに根強い社宅需要 2019.12.12

総務省は9月30日、「平成30年住宅・土地統計調査」のうち、「住宅及び世帯に関する基本集計(確定値)」の結果を公表しました。今回150超のデータが一気に公表され、全国・都道府県だけでなく、市区町村まで細かく集計されており、私たちは住宅や土地に関するより精密なデータを見ることが可能になります。【日本の住宅の今を知る!住宅・土地統計調査を大解剖】と題した特集で、この「住宅・土地統計調査」で気になるデータをピックアップし、深堀していきたいと思います。

皆さんは社宅に住んだ経験はありますか?私は幼少期に2年程、父の転勤先にあった社宅に住んでいました。当時はよく見かけた社宅ですが、バブル崩壊以降、経費削減やCRE戦略の一環として社宅の統廃合が進み、今ではあまり見られなくなったように思います。今回は、この社宅にスポットを当てたいと思います。

なお、住宅・土地統計調査では「給与住宅」(本コラムでは以後「社宅」で統一)と表現し、以下のように定義されています。

給与住宅
社宅、公務員住宅などのように、会社、団体、官公庁などが所有又は管理して、その職員を職務の都合上又は給与の一部として居住させている住宅(会社又は雇主が借りている一般の住宅に、その従業員が住んでいる場合を含む。)。この場合、家賃の支払の有無を問わない。

日本における社宅の今

住宅・土地統計調査の前に、着工戸数で社宅の変遷を見ていきましょう。

■社宅新設着工戸数の推移

(国土交通省「住宅・土地統計調査」より作成)

高度経済成長とともに、一気に社宅は建てられていきました。終身雇用の時代において優秀な人材を確保するため、また、大量の労働力を確保するためには地方の人材を呼び寄せる必要があったので「住」でのメリットが欠かせなかったのです。当時の着工戸数はピーク時の1970年で8万8千戸でした。その後、資産として不動産を所有するメリットが大きいと考えられ、バブル期にもまた復調しましたが、バブル崩壊後は不動産価値の下落に伴い所有のリスクを感じる企業が増え、社宅の着工戸数は減少しました。更に、2000年以降は、所謂「持たざる経営」がもてはやされ、社宅の数は減少していきました。

それでは、「借り上げ社宅」も含めて、実際に社宅に住んでいる世帯はどれくらいなのでしょうか。

■社宅に住む世帯の割合(全国)

平成30年住宅・土地統計調査によると、社宅に住んでいる人の数は全国で約110万世帯。総世帯数で割ると約2.1%の世帯が社宅に住んでいるそうです。20年前の同調査の結果によると、社宅世帯率は4.0%でしたのでその数は大きく減少しているのが分かります。

社宅が多いのは日本初の鉄筋コンクリートマンションがあるあの都道府県

■都道府県別 社宅に住む世帯の割合

都道府県別にみると、長崎県が3.1%でトップになりました。長崎県には造船所を始め、多くの工場があるため社宅も充実しています。また、長崎県といえば、世界遺産「軍艦島(端島)」が有名ですが、この軍艦島にある日本最古と言われている鉄筋コンクリート造の高層アパート、これこそ社宅です。このころから長崎県では社宅の文化が根強いのかもしれません。

意外に多い高収入の社宅暮らし

次に年収別に社宅世帯の割合をみてみましょう。
■世帯の年間収入階級別 社宅に住む世帯の割合

意外にも、700万円以上の高収入世帯層で、社宅に住んでいる割合が高くなっています。ある程度の大企業となると福利厚生が整っており、社宅を完備しているところが多いことが要因のひとつであると言えます。

新入社員用・若手社員専用の社員寮が復活傾向

冒頭に社宅の建築戸数が減っているとお伝えしましたが、実は近年社宅の在り方が見直されつつあり、社宅に復活の兆しが見えています。

有名なところでは、伊藤忠商事が2018年に18年ぶりに「独身寮」を復活させています。横浜市日吉駅から徒歩3分で、駅から本社へは約30分で行ける好立地に加え、サウナ付きの大浴場や屋上テラス等の設備も豪華。ただし、入居年数の上限は4年までと限られているそうです。
この若手専用の社宅の狙いは、「若手社員のタテ・ヨコ・ナナメの横断的なネットワークの構築」で、実際に社宅でのつながりが、実務に生かされているそうです。

このように、ひと昔前は「福利厚生」の一環として取り組んでいた社宅が、「つながり」や「心の安らぎ」といった目的で導入されるケースが増えて来ているようです。

また、優秀な新卒を確保するために、若手層を対象とした社宅を導入する動きも多く見られています。

このことは統計上も明らかで、年齢別の社宅割合を平成10年・平成30年調査で比較してみると、社宅世帯自体は減少傾向にあるものの、25歳未満の年齢層だけ20年前よりも増加しています。

■年齢別 社宅に住む世帯の割合

福利厚生としての側面だけでなく、不動産資産としての会計上・税務上の観点、また、社員のパフォーマンスまであらゆる面に関わってくる社宅。今後も、じわじわと復活してきそうです。

 

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