薬に関するお金の問題

BUSINESS TREND 薬に関するお金の問題 2019.08.27

スーパードクター明星智洋による『働く大人の健康法』では、最近著書「先生!本当に正しい『がん』の知識を教えてください!」を出版された明星先生にお越しいただき、弊社代表の吉崎誠二との対談を通じて現代のがん診療について学んでいきます。
第3回では、新薬の開発について詳しく教えてもらいます。

スーパードクター明星による『働く大人の健康法』第3回~薬に関するお金の問題~
今回のキーワード
・高額療養費制度
・新薬開発

吉崎「(前回の話を踏まえると)慢性骨髄性白血病は根治出来るってことですね」

先生「何を以て根治とするか非常に難しいね。薬を飲み続けていれば治るんだけど、薬を飲まなければ再発する。この薬を飲み続けるって行為にはまた別の問題があるんだ」

吉崎「お金の問題?」

先生「そう。薬1錠を4000円として1日4回飲むと16000円。月に約50万円かかるし、それって年間で言うと600万円。保険負担で3分の1になっても200万円はかなり高い。そこで、国の高額療養費制度っていうものがあって、ある一定の額を超えた分は国が還付しますってものなんだ。一般的な年収の人だと月々4万から10万円程度を超えた分は戻ってくる

吉崎「それはすごい。」

高額療養費制度とは…
同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額(年齢および所得状況等により異なる)を超えた分が、あとで払い戻される制度。

先生「例えば今回のCAR-T療法は3700万円するから通常の3割負担だと1000万かかる。でも高額療養費制度を適用すると、一時的に1000万を払うことになるかもしれないけど、その後996万円戻ってくる!CAR-T療法を使えば白血病が一発で治るんだったら、ってことで国が医療財政として認可したんだ。日本の医療制度ってすごいよね。そしたら製薬会社も躍起になって開発費に何十億とかけて薬を開発してくるんだ」

吉崎「すごいですね。でも薬の開発費ってなんでそんなにかかるんですか?」

先生「薬はまず研究を経て試作されるんだよね。薬の試作が出来たらまずマウスなどで実験をするんだけど、マウスに効いたら人間に効くとは限らないよね。だから薬ができたら人間に投与する治験をしないといけない。治験というのは第一相から第四相まである。まず、どの量が一番適切かを調べるのが第一相試験。たとえば、注射の1時間後、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後に採血をして血中濃度を測るなどして細かいモニタリングをするんだね。これはもちろん癌患者に対して試験するんだけど、その患者の負担金額は0なんだ。その際の医療費は誰が払うのかというと国は負担せずに製薬会社が全額払う。この試験を約12~15人を対象に行う。そして、それ以上投与すると副作用が出るっていうボーダーラインの最大対応量が分かるまで続けるんだ」

吉崎「これが第一相試験なんですね。」

先生「第二相では実際に効くのかどうかを試験して、第三相では10倍くらいの人数で試験をするんだ。これも全部製薬会社の負担で。そして、ここまでやって効果が出れば初めて薬として承認されるかもしれない」

吉崎「まだ『かもしれない』の段階…」

先生「そう。ただ、実際は第一相/第二相でかなりお金を掛けているのにポシャる薬の方が多い。そもそも開発しているのに第一相までいけない可能性もたくさんある。だから新しい薬を作ろうとして取り掛かっても、市販されるまで10年かかることだって少なくないんだ。それほど膨大な時間がかかるっていうことは人件費や研究開発費も膨らむ。仮に100億かけたとしても認可されるまでは利益が0円。それを何回もトライアンドエラーで繰り返し開発しているから莫大な金額がかかるってことだね」

(続きます)

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